百人一首が藤原定家の作という証拠は無く､百人一首という題も､後世の人がそう呼ぶようになったもので､定家がつけたのではないようです｡
その前に作られた､定家作の百人秀歌に､定家の子為家が手を加えて現在の百人一首になったと考えられています｡
当時は､障子に絵や､和歌を飾る慣習があり､百人一首も嵯峨山荘の障子に貼られた色紙と言われています｡
文学作品として味わおうとすると､何人かの歌人の歌は､もっといい歌があるのに､定家はなぜこの歌を選らんだのだろうという疑問が残ります｡
百人一首は､一首づつ味わうのではなく､百首全体で何か奥の深い人生の何かを訴えようとしているように思えます｡
百人一首という現存最古記述は｢百人一首応詠抄(ｵｳｴｲｼｮｳ)｣(1406)の｢･･小倉山荘色紙和歌也、それを世に百人一首と号するなり｣です｡
いつ頃から百人一首と呼ばれるようになったのかは分かりません｡
百人秀歌は昭和26年宮内庁書陵部で発見されされました｡
内題に｢百人秀歌 嵯峨山庄色紙形 京極黄門撰｣とあります｡
京極は定家の住いのあった一条京極｡
黄門は唐名で定家の官位である中納言を指すことから定家作と断定されました。
百人秀歌と百人一首のどちらが先に作られたかという論議もありますが､家隆の官位が正三位から正二位に昇進していることなどから､百人秀歌が先だとされています｡
百人秀歌は97首までが百人一首と同じで､百人一首のうち74と,99後鳥羽院,100順徳院の3首が無く､別の4首が入って101首になっています｡
74は､同じ作者源俊頼朝臣の｢山桜さきそめしより久方の雲井に見ゆる滝の白糸｣が入っています｡
何より百人秀歌と言いながら101首あるのはなぜか?
わざと､未完成であることを示したのではないかと推測させます｡
当時は､承久の乱の十数年後の頃であり､鎌倉幕府を恐れて､最高戦争犯罪人の後鳥羽､順徳の歌を入れられなかったので､代わりに他の歌を入れたのではないかという説があります｡
後世の人(おそらく定家の子為家)が手を入れたという根拠は､後鳥羽院と､順徳院の院号にあります｡
いずれも､定家の没後に付けられた謚(おくりな)なので､定家が使うはずはない｡
従って後世の誰かが手を入れたに違いないという推論です｡
百人秀歌に"嵯峨(ｻｶﾞ)山庄色紙形"とあり､定家の小倉山荘を嵯峨山荘とも言うので､小倉山荘の事かと思われましたが､現在の通説では､宇都宮蓮生(頼綱)の嵯峨中院です｡
定家の日記｢名月記｣の1235年5月27日の記述に｢予､本より文字を書く事を知らず｡嵯峨中院障子の色紙形､故(ことさら)に予に書くべき由､かの入道懇切なり｡
極めて見苦しき事なりと雖(いえど)も､なまじひに筆を染めて之を送る｡
古来の人の歌､各一首｡
天智天皇より以来､家隆･雅経に及ぶ｡｣
と記されていること等から､かの入道(宇都宮蓮生)の嵯峨中院とされています｡
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